ホテルのプールにしつらえられた椰子の木が風にざわめく。 23時のサンフランシスコを包む、特有のハイビスカスの甘い香り。 異国情緒というのはこういうことか、とほむらの首元のネックレスを 撫でながら思う。 ネックレスには大量のグリーフキューブとソウルジェムをぶら下げて、 ゴージャス感を醸している。 あたしも同じものを自分の首、腕、いたるところに 付けている。 それ以外は何も身につけない、ヌード。 二人の美女が全裸で、夜の屋上プールサイドを遊ぶ。 旧世紀型を模したジュークボックスからは、これまた古いイーグルス。 ほむらは唇をあたしの胸に這わせ、乳首に舌を絡める。 そのたおやかな指先があたしのおへそから下腹部に伸び、秘裂へとゆっくり滑る。 そう、今日の二人は生やしていない、誰が見たって女の子だ。 こういうシチュエーションでは生やさないほうがいいじゃない? 異国で御伽噺のように戯れる美女二人、そのほうが絵になるわ。 ほむらのその意見に、あたしも賛同したのだ。(まあ……しぶしぶね) 「綺麗よ、杏子」 「お前の方が綺麗だよ」 そう言ってほむらのお尻をやや乱雑に撫で回す。 1億回は使われたであろう月並みなセリフで返してしまったが、本当にそう思う。 プールに反射したゆらめく月の光に照らされたほむらの肢体は どこまでも白く透明な、羽化したての昆虫のよう。 「せっかくこんな雰囲気なのに、私の肉付きはゴージャスじゃないわ」 「アメリカだって肉料理ばかりが最高じゃないさ」 そりゃあプレイボーイの金髪グラビアとは趣が違うが、黒髪だってイカしてる。 それに多少骨ばったほむらの身体に手を這わせれば、あたしだけが知る 柔らかな場所がいくつもあるんだ。 首筋、背中、おへその周り、知る限りのほむらの弱点を指先で愛してやる。 「あ、あ……んっっ」 「はぁ、はぁ……」 ほむらもあたしの全身の弱いところに口付けと甘噛みを続ける。 そのうち頭が下がってゆき、あたしの股間に両の手をあてがうと あそこを開いて優しくキスされる。 「あ、あっ……ほ、むら、あ」 「くちゅ、ぴちゃっ」 クリトリスに何度か優しいキス、その直後に思いきり強く舌で押され、 あたしの身体は軽く跳ね上がる。 「は、はっ! あ、あんんっ」 あたしも手を伸ばし、ほむらの首もとのソウルジェムをひと撫ですると その小さな胸を弄ぶ。 「い、やらしい、胸、してるな」 「や、馬鹿……っ」 平坦だけど手のひらに感じるゆるやかなカーブ、そこに突然現れる 感じて脹らんだ乳輪。 先へと辿れば、決して弱くない、むしろ力強く屹立した 桜色の突起の刺激があたしの手をも興奮させる。 「んん、だめ、見、見られ……て、はぁっ」 ほむらの言葉に左を見れば、プールサイドから少し離れた出入り口付近で 一人のボーイがちらちらとこちらを窺っている。 「へっ、いいじゃん……見せ付けてやろうぜ」 「ん、もう……っ」 どうせさっきからフルヌードなんだよ? 旅の恥は掻き捨て、楽しもうぜ。 開き直ったほむらの舌はあたしの中を激しくかき回し、快感の波が怒涛となって押し寄せる。 「はあ、あ……っ、ほむ、ら……!」 「お客様、ロブスターの丸焼きでございます」 「あ、そ、そこ、テーブ、ルに、置いて……っ、あ、はぁんっ!!」 ボーイが背後のテーブルに料理を置いたのと、あたしがイったのはほとんど同時だった。 びくびく痙攣するお尻に、うわずった声とイキ顔……見られたかな。 畜生こいつにゃチップはやらねえ、十二分すぎるだろう? ボーイは気を遣うように背を向け、落ち着かない様子ですたすたとその場を去った。 き、気にしない、気にするなあたし……。 それにしても裸見られる程度は大丈夫と思ってたが、 さすがにこれは動じないというわけにはいかないな。 ふうふうと息を整えながら、さらに行為を続ける二人。 ちょっとヤケになっているテンションだ、自分でも思考が荒ぶっているのがわかる。 さっき飲んだトロピカルドリンクに、実はアルコールでも入ってたか? 「んっ……来るわ、杏子」 「またボーイか」 「坊主のほうよ」 あたし達は遊びだけでシスコくんだりまで来たわけではない。 彼女の予感どおり、ここらに最近多く出現するという魔獣どもが具現化し始めたのだ。 あたしらの魔力に引かれて、やつらはプールサイドを取り囲むように 次々と姿を現した。 「ったく……いいトコだってのにさァ!」 こんだけ盛り上がった気分を、そろいもそろって台無しにしやがって。 殺す、てめえら、ブチ殺す。 久しぶりに自分の中に、強い破壊衝動が燃え上がってくる。 あたしらを取り囲んだ魔獣から、レーザーが一斉発射される。 二人を庇う形でドーム状の防御結界を展開、着弾、一瞬の後に結界は爆散。 その中心から、全裸のあたしが槍だけを携え、15mの上空へと一直線に飛び上がる。 坊主どもの視線と攻撃は動いているあたしだけに集中する。 そのうちジャンプの頂点、どうしても動きが止まる位置。 魔獣のレーザーは間違いなくその空間めがけて発射された。 だが、あたしはそのすぐ下方。 頂点手前で、さやかよろしく空中に魔方陣を展開、そいつに逆さまに着地したのだ。 「揃って地獄に落ちやがれ!!!!」 魔方陣を蹴って下降しつつ逆さのまま全力回転すれば、遅れてついてきた槍の切っ先は 魔獣どもを一気に横薙ぎ、切断。 着地しつつ十字を切ったときには、すでに真っ二つになった10体の魔獣の体がぐずぐずと崩壊を始めていた。 「お見事、杏子」 「ふう、ふう、群れてやがるからだ、ざまあ見ろビッチ、ファック!」 防ぎきれなかったレーザーで太腿や腕に多少の傷を負ったが、続きをしたい気分の方が上だ。 あたしの血を小さな舌でぺろぺろと舐めてくれるほむらを抱き寄せ、激しくキスをする。 息が上がってる。 エッチと、怒りと、戦闘で体を動かしたせいで、あたしはひどく興奮していた。 ほむらをプールサイドに押し倒すと、あそこをあそこに押し付ける。 「ああ、んっ」 「はぁ、はぁ」 乱暴に。 くちゅくちゅと音を立てるくらい、おまんこを擦り合わせる。 上る、登る、今夜はどこまでも昇る。 さっきビッチと言ったな、ありゃ実はあたしの事だ。 ただしここに居る、可愛い黒髪のお姫さん専用のな。 「きょ、こ、きょうこぉ」 ほむらの顔が歪み、その全身にぴりぴりと微細な振動が伝わり始める。 あそこの熱はすっかり上がり、ぴゅっ、と少量の蜜が吹き出している。 あたしからも返すように噴出し、交換する。 「あ、きょうこぉ、い、いい……!」 「!」 その時、あたしの背筋を何かの予感がちりっと焦がした。 ほむらも同じようで、二人は視界の端でもう一体の魔獣の位置を素早く確認する。 同じくらいの高さのビルの上、距離は約1km、役回りはスナイパーか。 それでもあたしは行為を止めない。 二人の粘膜がとろけて互いを溶接しそうなくらいに交じり合う。 「任せたぜ」 「う、ん、いいわ、続けて」 あたしはほむらを愛撫し続ける。 風を切る音とともに、クソ魔獣のヘタクソレーザーがあたしらの頭上を背中を、何度も掠める。 流れ弾がテーブルを直撃し、皿ごとロブスターをひっくり返す。 「ん、はあ、あああっ」 ほむらが喘ぎながら、左手に輝きとともに弓を具現化させる。 魔獣のレーザーの狙いはだんだんと正確になってくる。 すぐ横のパラソルが音を立てて蒸発する。 「ふ、う、んんっ! あっ!」 上半身を艶かしくくねらせながらほむらは、どこも見ずに射った。 放たれた紫の光の矢は空中を直進する。 「あ、あ、あ!!」 ほむらのマニアックでいやらしい胸がぷるんと揺れる。 あそこからは射精のような勢いで、愛液がぴゅ、ぴゅっと飛び出す。 矢は直進する。 正確にあたしらを狙った魔獣のレーザーに真っ向 ぶち当たり、レーザーを切り裂き、光の塵へと変え、なお直進。 「あああああああ、ああっ…………!!」 ほむらが最大の絶頂を迎える。 何度もびくびくと跳ね、あそこからは泉のように 秘蜜が湧き出し、あたしのと混ざりあい、お互いの内腿をしとどに濡らし、 あたしも追って絶頂し、 矢は直進する。 ほむらの頭がくらりと空に8の字を書くと、糸の切れた人形のように仰向けに倒れこんだ。 あたしも完全にイキながら、同時に視界の隅で確認した。 魔獣が頭部を正確に射抜かれ、断末魔を上げて絶命する瞬間を。 あたしらは手抜きをしたわけでも、セックスで狂ったわけでもない。 この距離だとあたしの得物は役立たずだし、今から1kmの距離を接近していては ヤツを取り逃がしていたってことだ。 あたしらがこうして動かなければ、ヤツも動かない。 「お疲れ」 「ふぅ……んっ、は、ふ……うぅん」 艶っぽく涙をこぼしつつ、でも小さな子のように可愛く鳴くほむらの乱れた前髪をかきあげると、 優しくキスをしてやる。 やれやれ、今日の仕事はこれで終わ…… 「お客様、何か物音が。 大丈夫ですか?」 またもボーイ。 おいおいおい、本当に空気読めよな。 いけね、ほむらの奴が素っ裸で仰向けに倒れたままだ。 反射的にあたしはほむらの身体をを庇うように立ち上がってしまった。 当然あたしのぴんぴんに立った乳首、とろとろに糸をひいてるあそこ、 多分真っ赤なはずの頬、全部、見られた。 ……もういい、ヤケだ。 「ああ、連れと燃えすぎてね、折角のロブスターがご覧の有様さ。  代わりを持って来てくれるかい?」 「か、かしこまりましたッ……! 無料サービスさせていただきます!」 あたしの濡れた肢体を間近で見たボーイは頬を赤らめ、嬉しげに走り去る。 何とか平静を装っていたあたしは、はぁと息をつく。 「イキ顔は見られるわ、全身くまなく見られるわで散々だよ……」 「なんていうけど、実は最初からボーイには幻惑魔法をかけてあった、  という種明かしでしょ?」 「へへ、まあね。 哀れなボーイにゃあたしら二人がずーっと男に見えてるよ」 そうと分かっていたって、やっぱり緊張しちまうんだよな。 「……おかしいわね」 「何が」 「じゃあなんで無料サービスになったの?」 「……!?  あ、つまり」 「男が好き、と……」 あたしらは自分のことを棚に上げると、肩をすくめて声を揃えた。 「「 さっすがアメリカ 」」 ― 了 ―